4.親愛なる共犯者へ
病人用の味気ない寝台で眠り続ける日本さんの、包帯で巻かれた頭をそっと撫でる。
こんなに傷ついて、夜毎苦痛か悪夢からかうなされて。
今だけは、たとえ望まぬ眠りであろうともゆっくり休んでて。
私は、眩暈がする中で日本さんに施した術がきちんとかかっていることを確認して、病室の入り口を振り返った。
「もういいのかい?」
「うん。・・・どうせしばらくは起きないだろうし」
「君、結構クールなんだね。女神っていうくらいだから、もっと慈愛に満ちたものかと思ってたよ」
「面白い事言うんだね・・・。日本さんをこんなになるまで戦わせ続けた私が慈悲深いだなんて」
彼や彼の上司たちは、私のことを稀代の悪女だと信じているらしい。
日本さんを戦場へと駆り立てボロボロにさせた黒幕。
知らないうちに私も随分と悪人になったものだ。
違うと反論する体力も気力も残ってないから、後は粛清されるだけみたい。
「・・・私とした約束は覚えてる、アメリカ?」
「ヒーローは約束を守るんだよ。日本のことは僕に任せて」
「もう1つ約束して。日本さんが目覚めても、絶対に私のことは口にしないで」
「・・・ねぇ、君は本当に日本を誑かしてたのかい? 違うんだったら俺」
アメリカが真っ直ぐに私を見つめる。
何を今更言うんだろう。
私は日本さんの足は引っ張るし迷惑をかけたりもするだろうけど、傷ついてほしいと思ったことは一度だってないのに。
どうして今になってそれに気付くの?
もっと早く気付いてくれていれば、あなたとはもっと違う形で見つめ合えたのに。
「悪役はヒーローに倒される。それでいいじゃないアメリカ」
「君が悪役だっていうことから違うんじゃないのかい!? 本当のことを言ってよ、俺は君を」
愛してるのに。
ヒーローの告白は、『ヒール』に届きはしない。
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