5.怖がりはお互い様
実は暗い所はあまり好きではなかったりする。
飲み込まれてしまいそうな闇は、エルファが苦手としている場所だった。
だから今も怖い。
頼むから早く、誰かランプを持ってきてくれ。
「・・・エルファ?」
「バース・・・!!」
ぼんやりとした光と共に現れた見慣れた顔に、エルファの涙腺が一気に緩んだ。
人心地ついたとはこういうことを指すのだろう。
ほっとして溢れてきた涙に驚いたのか焦ったのか、すぐさま肩を抱いてくれるバースの温もりが愛おしかった。
「良かった・・・!」
「うん、うん。俺もエルファが無事でほっとしたよ」
「暗いとこは苦手なの・・・。消えちゃいそうで嫌い・・・」
ぎゅっとしがみつくと、バースの体がびくりと震えた。
いや、今はちょっととしどろもどろな声を上げている。
何か不味いことでもあったのだろうか。
もしかしてバースも暗闇が苦手なのだろうか。
でも、独りでいるよりも2人の方が楽だ。
「バース、どこにも行かないでね」
「・・・うん」
「どっかに行っちゃうんなら、私全力でバースを引き寄せるからね」
「うん。俺もエルファが消えたりいなくなったりしないように、ちゃんと守るから」
エルファが暗闇を怖がるようになったのは、もしかしたら自分のせいかもしれないとバースは思った。
恐怖を完全になくすことはできないだろうが、恐れを和らげることくらいならできる。
それに、きちんと腕の中にエルファがいることで、何かの恐怖から解放されている自身がいることも明らかだった。
「エルファ、今度からはちゃんと首か胸あたりに抱きついてくれるかな?」
「どうして?」
「俺は今、俺の理性の崩壊が怖いから」
バースは腹部にしがみついているエルファの頭を撫でると、深く深くため息をついたのだった。
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