6.わかりあえなくても愛
とても不思議な気分だ。
リグは自分と同じ名前の少年の旅を、どこかもわからぬ場所から見下ろしていた。
「バース。今さ、俺と同じ名前の奴が旅してる」
「知ってる。てかいつの間に俺らは次元を超えた会話するようになったんだ?」
「旬の話題を提供しないとやってけない時代になったんだよ、きっと」
リグとバースは無言で旅人たちを見下ろした。
どことなく誰かに似ている子がいる。
とても可愛らしい服を着て、ライムとお揃いの水鏡の盾を手にした女の子だ。
似ているどころじゃない、そっくりである。
「・・・あの子、フィルちゃんじゃね?」
「いや、フィリアっていう魔法使いらしい。あっちのリグの好きな子らしい」
「・・・なんつーか、見た目だけじゃなくて名前も似てんのな」
バースは桃色の髪をポニーテールにしている少女を凝視しているリグの横顔を見つめた。
駄目だこいつ。自分の彼女に今逢えない状況だからだろうか。
異次元のそっくりさんを食い入るように見ている。
それもう視姦のレベルだぞリグ。
「フィリアちゃんだっけ? 思いっきりリグの好みだろ」
「・・・否定はしない」
「一緒に旅してんだもんな。魔法使いだし、好きな子にバイキルトとかしてもらったりして」
ごくりとリグが生唾を飲み込んだ。
そこまで飢えているのか、我らが勇者様は。
俺やエルファのバイキルトじゃ不満だってのか、高望みすんな。
バースはリグが急にかわいそうに思えてきた。
慰めてやりたいが悲しいかな。
俺がやってもきっと逆効果だ。
「・・・早く仲直りできるといいな」
「何言ってんだバース。あっちのリグはかわいそうだぞ。
魔法使い死にやすいから、きっと結構な頻度で恋人の死体見てる」
「・・・もうちょっとさ、素直に羨ましいとか思えよ」
「プライドが許さない」
決して出会うことのない異次元の同名人物に、異様なまでの対抗心を燃やすリグだった。
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