9.そろそろ気づいて
まただ。これ、そろそろ報告した方がいいのかな。
でも迂闊に喋って被害が増えても困るしな。
は自分の下駄箱のちょうど下に転がっている、やや髪が焦げている男子学生を見下ろしため息をついた。
1週間で2度ほど、こうやって若干焦げた男子が転がっている。
場所はいつだって自分の下駄箱入れの下だ。
これはやはり、嫌がらせの一種なのだろうか。
誰かの恨みを買った覚えはないが、もしかしたら気付かないうちに人を傷つけるような行為をしていたかもしれない。
「あの・・・、大丈夫ですか?」
そっと体を揺さぶってホイミを唱える。
朝から魔力を使いたくないのだが、放っておくわけにもいかない。
最低限の回復呪文を施し動けるような状態にして、後は保健室の不思議な泉の水を飲むなりして自分で癒してもらう。
がばっと身を起こし自分を見つめ頬を染め、焦げた服を見て顔色を失くす様子は、これまで下駄箱で接してきた34人全員同じだ。
何か呪いにかけられているのかも。
うーんと下駄箱で考えていると、おはようと元気な声と主に肩をぽんと叩かれた。
「あ、おはようゼシカ」
「あー・・・、また出た?」
「うん。何なんだろうね、これ・・・・・・」
「まぁ、に被害が及ぶことはないと思うけど・・・」
ゼシカはの後方へと視線を飛ばした。
やっぱりいる、今日もいる。
奥手ぶらずに堂々としてればいいのに。
ゼシカは不安そうな顔をしているを促し教室へ入る直前、柱の陰の青年になんとなくメラミをぶつけた。
意味はない、あるのは害意だけだ。
「ドンマイ、ククール」
「『ドンマイ』じゃねぇよ・・・。お前、いい加減まともに告白したら?」
軽い火傷を負った手を自前のホイミで癒すと、ククールは柱にもたれかかっているを見やった。
さらさらの焦げ茶色の髪に澄んだ夜空と同じ色を宿した黒い瞳。
もっとも伊達なのか本気なのか、やたらと分厚い眼鏡をかけているため滅多にその瞳を見ることはできないのだが。
「こ、告白なんてできないよ・・・!
だってきっと僕のことなんか知らないだろうし、いきなり現れて不審者扱いされても嫌だし・・・!」
「偶然会うシチュエーションがいいんなら俺とゼシカがなんとかしてやるって」
「作られた出会いなんて御免だよ!
あぁでも、毎度に告白する輩は許せないからギガデインしたりジゴスパークしてるけど、
翌日介抱されんなら僕は自分にギガブレイクしても・・・」
「そういうことやってるからバレるの怖くて後ろめたくて、さらに出にくくなったんだろ」
とゼシカの隣のクラスのとククール。
の想いどころか存在自体がに届く日は、まだ遠い。
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