2.受け取る様子は『愛妻弁当』
羨ましい羨ましい羨ましい。
陸遜は目の前で笑顔で弁当の受け渡しをしている恋人たちを見て、心の中で羨ましいと3回ほど呟いた。
彼女の弁当が欲しいわけでも、もちろん彼女自身が欲しいわけでもない。
その行動に憧れているだけなのだ。
恋する女性に上手い口説き文句も言えず、考えつくことにすら四苦八苦している自分には夢のまた夢のような状況である。
このままで、本当に『今日もお勤め頑張ってください伯言様』と言ってもらえる日が来るのだろうか。
来ない気がする。
そもそも、向こうは想われていることに気付きすらしていないかもしれない。
これほど熱く狂おしく想っているというのに、一方通行は辛すぎる。
「癪ですが、凌統殿に助言を乞うべきでしょうか・・・」
国境も身分も敵味方も越えた恋を成就させたばかりの彼ならば、何かいい知恵を授けてくれるかもしれない。
意中の相手を手元に置くのにはかなり難儀していたが、それ以前の華々しく派手な女性経験に裏打ちされた助言は
頼もしく思える。
きっと親身になって相談に乗ってくれるだろう。
なにせ、彼の恋人を孫呉に留め置くよう奔走し尽力したのは他でもない自分なのだ。
「・・・軍師さん、また持病の恋患いかね」
「わたくしがこちらに来る前からだとか・・・・・・。陸遜殿のお心が晴れる日が早く訪れますように」
ぶつぶつと呟き百面相をし続ける陸遜に、凌統とは顔を見合わせため息をついた。
元に戻る