5.悪戯心のキューピッド達が言うことには、



 さんなんて大っ嫌い!
僕は、僕のことが嫌いなあなたも好きです!
そんなはちゃめちゃな告白をしていた甘酸っぱいあの頃が懐かしい。
ククールは修道院の裏の井戸で水を汲みながら、すぐ隣で人目も憚らずいちゃつく新米バカップルを横目で見やった。
2人がくっついたのは嬉しいがなぜだろう、良い事をやったという幸福感が微塵もない。
兄弟揃って一組の男女の恋愛に協力していたとは、血が争えないというかなんというか。
マルチェロのあの一言がなければ今ここにがいないわけだし、自分があの時に猛烈なフォローをしなければの告白に耳を貸さなかっただろう。
に告白して受け入れられて吹っ切れたのか、は牛乳瓶の底のような分厚い伊達眼鏡を捨ててただの好青年になった。
もちろんもう、の下駄箱近くに不埒な輩の扱げた体を捨てることもやめた。
そして恥じらいも捨てた。
マルチェロに睨まれようが叱られようが、ところ構わずを求めるようになった。
そのおかげで今、ククールは監視と遮断のために修道院でただ働きをさせられている。
の料理が毎日食べられるだけでも良しと思え愚弟がと丸め込まれ命令され、渋々重労働に身をやつしている。
毎食の手料理を食べていることでから嫉妬を買う意味がわからなかった。
それがここまでお膳立てしてやった親友に対する目つきと怒りと仕打ちか。
ククールはやるせない思いでいっぱいだった。




(・・・ま、が逆ギレして学校から修道院から世界に至るまでをぶち壊さなくて良かったって思うべきなんだろうけど)




 1人をに捧げることで、がひた隠しているらしい彼の強力なバックアップ武装集団竜神族の怒りを鎮めることができる。
それでいいのだ、も人身御供になったとは思っていないようだし。




「おーい、そこらへんにしとかないと兄貴がそろそろグランドクロスすっぞ」

「えー、僕今日、槍も剣も持って来てないよー」




 会話の内容はおかしい気もするが、もう慣れた。
ああ、今日もいい天気だ。
ククールは雷雲でどす黒く染まる前の空を仰いだ。




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