10.無理ばっかりするんだから!
卵焼きとかんぴょうと桜でんぷんと穴子とカニかまぼことそれから・・・。
平らに敷いた海苔と白飯の上にこれでもかというほどに具を乗せているを、豪炎寺はキャベツを投入する前で制止した。
一体どれだけ入れるつもりなのだ。
そんなにたくさん詰めて上手く巻ける自信があるのか。
そう尋ねると、至極当たり前のように修也が巻くんでしょと言われる。
ちゃんと真ん中にしてないと怒るからねとハードルを上げられ、豪炎寺は黙ってカニかまぼこを脇に除けた。
「あ! どうして除けちゃうのこれも入れるの!」
「こんなにたくさん入れて巻けるわけないだろう」
「いいやできる、だってお寿司屋さんはやってるもん」
「プロと素人を一緒にするな。大体どうして俺なんだ、がやればいい」
「こういうのは手が大きくて握力ある人がやった方が上手いこといくんだって。
ほら、私と修也の手こーんなに大きさ違う。昔はこんなことなかったのになんか悔しい」
ほらぁと言われぴたりと手を合わせられる。
なるほど、改めて比べてみれば大きさの差は歴然としている。
こんなに小さかったかと思わず呟くと、気に触ったのかもう片方の手で頬をぎゅうと抓られる。
痛い、地味に痛い。
足を蹴られなかっただけのわかりにくい優しさを感じるが、足に危害を加えない分、他の場所への攻撃は容赦ない。
最近は顔面がお気に入りのようだ。
だが、これも身長の差がもっとつけばできなくなるだろうから、今のうちはと大人の対応をしてやっている。
あと2年くらいといったところか。
「わかった。、2種類作ろう。そっちの方がバリエーションに富むし、明日の弁当の彩りも綺麗だ」
「むー・・・」
「ほら、椎茸も入れよう。サラダ巻き好きだろう、」
「別にいいけど・・・。その代わり、すごく綺麗に巻かなきゃ駄目」
「わかった、俺に任せろ」
失敗は許されない。
すべて成功しなければ先がない。
豪炎寺は覚悟を決めると、ぎゅっと力を込めて海苔を巻き始めた。
具がはみ出してくる感触はしないが、それは成功したということだろうか。
ひと仕事終えた豪炎寺の手をどけ、巻き寿司の出来を確認したが早速切り分け始める。
良かった、きちんと真ん中になっている。
「これでいいのか?」
「うんうん! やっぱ修也に頼んで良かったー。持つべき者は使える幼なじみだよねぇ」
便利ななんでも屋としか思っていないだろう。
豪炎寺はそう言いかけ、それを言ってしまうことで自身が便利屋であることを肯定しそうな気がして慌てて口を噤んだ。
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