07.構っての合図
背はあちらの方がかなり高い。
見上げる首が痛くなるのではないかと、時折我が身が不安になるほどに背は高い。
がっちりとした筋肉質ではなく細身ではあるが、やはり大人の男だからこちらよりも遥かに大きい。
だが、どんなに体格が良くても大きくても彼は実は甘えたがり屋だ。
は肩にもたれかかってきた恋人の拗ねた顔を顧みた。
「そのようなお顔をなさって、何かございましたか?」
「別に」
「左様でございますか」
「何かあったか訊かないわけ? 俺が何してたか気にならないってかい」
「別にとおっしゃったのは公績殿ですので、それ以上は何も訊きますまい」
「はいはい。は冷たいこった」
駄々っ子のように口を尖らせた凌統が、ごろりと寝転がりの膝の上に頭を乗せる。
初めのうちは戸惑ってばかりだったが、今ではこれが凌統の甘えだとすぐにわかる。
が凌統の頭をそっと撫でると、凌統は視線をこちらへと向けてきた。
「冷たいのにあったかいんだねえ、は。どっちが本物かい?」
「さあ、どちらでしょう?」
「冗談も言えるようになっちゃってもすっかり・・・・・・」
ひときわ大きく欠伸した凌統が、の腰に顔を埋めたきり動かなくなる。
これはもしや眠ってしまったのか。
腰の腕が回されているし、逃げられない。
は小さく息を吐き出しすぐに笑みを浮かべると、暖取りのための炎玉を宙に浮かせた。
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