お題・6
06.アト付けないって言ったよね



 ひたひたひたひた。ぴとっ。てくてくてくてく。くるっ。ばっ。じーっ。
・・・はあ、一緒に行きたいならそう言えばいいのに、うちの旦那様の行動パターンは本当に読めない。
私は5メートルほど後方の建物の陰に隠れている尾行人の腕を引いた。
ばれてたと訊かれたのでうんと答えると、つまらなさそうな顔をする。
まったく、後をつけるならもう少し上手にやってほしいものだ。



「お買物一緒にしたいの?」

「・・・うん。だって、何が起こるかわかんないから1人は危ない」

「アイスランドってばまだクリスマスのこと気にしてるの? もう大丈夫だよ、現に地球は生きてるわけだし」




 アイスランドと並んで街中を歩く。
外はものすごく寒くて、街往く人たちはみんな厚着をしている。
私も両手を擦り合わせて寒いねと言うと、アイスランドがぎゅっと自分の手で包み込んでくれる。
華奢に見えるんだけどやっぱり男だからか、アイスランドの手は私よりも一回り大きい。



「あったかい?」

「うん、ありがとうアイスランド。今日は何食べたい? お魚がいいかなあ、やっぱり」

「ノルの家からもらったサーモンあるから、それ入れてシチューが食べたい。それだったら野菜も摂れるしあったまるでしょ」

「そうだね、じゃあお野菜買いに行こっか。んー、早くお家帰って温泉入りたい」

「一緒に入る? 上せても大丈夫だよ、介抱してあげる」

「どうしよっかなー・・・」




 たまにはいいかな、最近アイスランドすごく優しいし。
ねえねえとせっつくアイスランドに返事をはぐらかしながら、私は市場に並ぶ野菜を手に取った。





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