08.あの男、何?
新学期が始まった。
今年もたくさんサッカーやりたいな、そうだなと通学途中で出会った鬼道や一之瀬、風丸たちと盛り上がる。
校門付近では秋とも出会いわいわいと歩いていると、後ろから円堂くーんと名前を呼ばれる。
振り返るとそこには、今日も今日とて一緒に登校中の豪炎寺とがいる。
風丸がいることは見えているだろうに、どうして俺?
そんな疑問を抱きながらも歩み寄ってくる2人を待つ。
こうやって見ると本当に美男美女カップルなのに、どうしてあれなのかなあ。
そんなことをぼんやりと考えながら待っていると、目の前へやって来たがはいと笑顔で袋を手渡した。
「・・・ん? 何これ」
「円堂くんにプレゼント?」
「え、円堂くんに!?」
「あ、大丈夫秋ちゃんそういうのじゃないから。円堂くん、去年修也の家に忘れ物しちゃったまま年越しちゃったでしょ?
借りたものはちゃーんと返すのが筋ってもんだからはいこれ、私が代わりに返しとくね!」
「そうだっけ? ありがとな、中開けていい?」
何を忘れていただろうか。
そもそもどうして忘れ物をが返すのだろう。
形からするとノートだが、そんなものを持って行った覚えはない。
ドキドキしながら袋を開ける。
中を確認して一度袋を閉じる。
いやいや、何を勘違いしているのかわからないがこれは自分のではない。
信じたくないのかもしれないが、これは間違いなくお宅の幼なじみの私物だ。
「何だったの円堂くん」
「あ、秋ちゃんは見ない方がいいよ。気分良くなるものでもないし」
「そうなの?」
「・・・豪炎寺、お前実は俺のこと嫌い?」
「何を言ってるんだ円堂、そんなわ「これ、お前の」・・・」
豪炎寺は円堂から押しつけられた袋の中を見て絶句した。
あいつ、どこに隠したかと思っていたらまさかこんなことに。
円堂くんのって言ってたじゃないと横槍を入れてくるの口を手で塞ぐ。
できれば耳も塞ぎたい。腕が3本あれば良かったのに。
「もがむがむむむ」
「円堂、これはお前のだ」
「に何言ったのかわかんないけど嘘は良くないぞ、豪炎寺」
「風丸、ちょっとの耳塞いでてくれ」
「・・・わかった、まーた余計な事言ったんだな」
「・・・頼む円堂、今日だけはお前のものということにしておいてくれ。部活の時に返してもらうから」
「それじゃ俺が損な役回りだろ! なんで俺が豪炎寺のエロ本持ってなきゃいけないんだよ!」
「ふ、安心しろ円堂。後で俺が真実を洗いざらいに話しておいてやる」
わあわあと本の押し付け合いをしていると、あのさと一之瀬が控えめに声を上げる。
やや頬を赤らめた秋の耳を塞いでいた一之瀬は、ゆっくりと顔を上げるとにこりと笑みを浮かべた。
「2人とも、秋になんてこと聞かせるの? 俺怒るよ、怒っていい?」
「「・・・すみません」」
新学期早々大怪我を負うところだった。
円堂は大人しく袋を受け取ると、自身の昔なじみが男で本当に良かったと心から安堵するのだった。
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