09.じゃあ、あの女なんなの?
我が妻も嫉妬するんだなあ。
趙雲は寝室でぷりぷり怒っている妻を、笑いを堪えて見つめていた。
こう言っては悪いが、ちっとも怖くない。
「ちょっと、聞いてますか子龍殿!」
「聞いている。で、何だ?」
「だから、どうして衣の裏にお化粧の跡が・・・。し、新婚の間くらい我慢して下さってもいいじゃないですか!」
びしっと件の衣を見せつけられ、うっと言い淀む。
確かにそれは女性と一緒にいた時についたものだ。
祝い酒だと酒を勧められるがままに飲んでいるうちに酔ってきて、うっかり女を近づけていた。
悪気も下心もなかったとはいえ、妻が怒るのも仕方がない。
まかり間違っても、怒っている妻が可愛いと思っている場合ではないのだ。
「妓女と遊ぶのも側室を作るのも駄目だとは言いません、子孫は大事ですから。
でも、もうちょっと、もう少しだけ私の気持ちも考えてほしいです」
「す、すまない。これからは控えるから。酒も程々にするからそう拗ねないでくれ」
「・・・私でいいじゃありませんか」
「え?」
「わ、私でいいじゃないですか! ななな何度も言わせないで下さい、趙雲殿のおたんこなす・・・」
むうと頬を膨らませそっぽを向いた妻に慌てて睦言を囁く。
しかし時既に遅し、今日はもう駄目です怒ってますいろんな意味でと却下される。
女遊びは当分やめよう。
趙雲は拗ねる愛妻を宥めながら、固く心に誓った。
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