お題・2
3.アフタサービス



 湿気を多分に含んだ生暖かい風が、なんとも気持ち悪い。
季節は梅雨、つい先程も雨が降ったばかりだ。
今でこそ止んでいるが、このジトジト感にはいつまでも慣れることはできない。



「この湿気で髪の毛がうっとうしくて・・・。
 いっそのこと、もうばっさり切っちゃおっかな。」


 エルファは自身の長く伸びた空色の髪の先をいじりつつ、ぼんやりと呟いた。
その言葉に以上に反応したのはバースである。



「いやエルファ、一時の感情で髪を切るのは止めた方がいい。
 というかやめろ。」


「どうして?
 あ、ショートカットは似合わないかな?」


「いや、なんでも似合うけど!!」



 少し離れた所から、公衆の面前での惚気や口説きは暑苦しいから止めろ、とのリグの声が聞こえる。
しかしバースは当然のごとく聞き流した。
彼は悩んだ。
このままではエルファは本当にばっさりやりかねない。
なんとなく苦し紛れにポケットを探ってみる。
すると、細い紐が見つかった。



「エルファ、動くなよ?」


 バースはエルファの髪を手に取ると、慣れた手つきでいじり始めた。
盗賊をやっていたせいか、手先がますます器用になったようだ。



「できた。鏡見てみ?
 少しはマシになっただろ?」


「あっ、結んでくれたの!?
 涼しい、ありがとうバース!」


「明日になったらまた結び直してやるよ。
 梅雨に限らず冬だろうが春だろうが・・・。」



 頭上高くで1つに結わえられた髪型にぱあっと顔を輝かせるエルファ。
その髪型でいると、なかなか活動的に見えなくもない。


「本当にいつでも結んでやるから、髪切るのは止めような?」

「うん!」


バースの梅雨の楽しみが、1つ増えたのだった。





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