8.支配欲
「ねぇねぇアスラン、教えてよ。」
茶髪の青年が暑苦しくアスランにまとわりついている。
ねぇねぇ、と駄々をこねるにはあまりにも年を取りすぎているのだが。
「嫌だと言ってるだろう。
・・・大体、知って何をするつもりなんだ。
ストーカーか?」
「やだなぁ、もちろん押しかけ旦那して、そのまま住み着いちゃうんだよ。
そしたら後は、婚姻届出すだけ。」
にこにこと悪びれることなく、その凶悪極まりない作戦を暴露するキラに、アスランは頭を抱えた。
どんなに強請られようが、大切な幼なじみの居所を教えてはいけない。
自分のこの口に、彼女の平穏な生活と貞操がかかっているのだ。
非常に重大な任務である。
「絶対に僕、尽くす旦那さんだと思うんだよね。
でもさりげなく僕しか愛しちゃ駄目とか言って、結構嫉妬深くもありそうなんだよね。」
「嫌、キラがあの子の夫になる可能性は限りなくないから。」
「わかんないよ?
いったん僕の手にかかれば、もう一生僕がいないとやってけないって体にするもんね。
だからアスラン、そのきっかけを僕に大人しく教えてよ。」
ねぇねぇ、となお一層アスランにまとわりつくキラ。
彼の発言は言葉を重ねるごとに、どんどん危うくなっている。
そのうち、彼女を慕うすべての男を抹殺するとか言い出しそうだ。
実際、アスランもそろそろ生命の危機を感じ始めている。
「ねぇねぇアスラン。」
「だぁっ!! もうお前うるさい!」
あまりのパニックとイライラに、アスランは戦時中さながらの種割れを起こしてしまった。
キラの頭をごつんと殴り、怒りに任せて足早に去っていくアスラン。
彼がキラの前から逃げたと見ても、別におかしくはない。
そんな逃げて行く彼を見て、頭にたんこぶを作ったキラはにやりと笑った。
「このたんこぶをダシにして、今度もっとアスランを強請ろうっと。」
後日、アスランは再びキラに駄々をこねられていた。
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