11.地の果てまで
銀髪の男とその2人の友人達の鬼ごっこはまだ続けられていた。
職業が軍人で身体を鍛えてあるせいか、逃げ足も追いかける足もすこぶる速い。
「待てぇっ!!」
「おい、そろそろ限界じゃね?」
「何言ってんのよ、もうちょ・・・うわっ。」
石につまずいて前へつんのめる身体を、ディアッカが細い腰をとっさに引き寄せた。
そのまま彼女の身体を自分の腕の中にすっぽりと包み込む。
「ったく、そのままこけて怪我でもしたらどうすんだよ。危なっかしいな。」
「でも・・・。」
10センチほどの身長差があるこの2人。
ディアッカの顔が下を向いている今、彼の行動は背後から抱きしめた彼女の耳元で、
熱っぽく何かを囁いているようにイザークには見えた。いや、見えてしまった。
「ディアッカぁっ、貴様それは俺に対する挑戦状かぁっ!?
その手を離せ、この万年色情魔がぁっ!!」
イザークのあまりの怒りように反射的に腰から手を離すディアッカ。
もとより彼にこの友人の婚約者を口説き落とそうなんていう無茶苦茶な予定はない。
しかし、それでイザークの怒りが収まるはずがないのもまた事実だった。
「ちょっと、なに男2人で追いかけっこやってんのよ。
しかもその物騒な武器は何よ、ねぇ。」
ディアッカを追いかける美しき怒れる鬼の手には、武器の金棒ならぬ銃が握られていた。
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