8.恋愛シミュレーション
「トーポっ。」
「ちちっ。」
「トーポ、可愛い!!」
「ちちちっ!!」
「・・・何やってんの?」
ポケットの中から出ているネズミのトーポに嬉しげに話しかけている少女に、
飼い主は面白くなさげに声をかけた。
「ん?トーポすごく可愛いから、ほら、鳴き声とか特に!」
そう答えてまたトーポの方に視線を戻す彼女。
そっとトーポを掌に載せると、そのままぎゅっと抱きしめた。
暖かくて柔らかそうな胸の中でゆったりとくつろぐネズミ。
心なしかその目は飼い主に勝ったかのような色をしている。
「・・・ねぇ、僕にはぎゅってしてくれないの?
トーポばっかりずるいよ。ネズミの癖に。」
「じゃあ今度やったげるね。」
少女の何気なく言った言葉を信じて、少年は今日も戦っている。
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