Halloween!
「公績様、今日ははろうぃんというそうです」
聞き慣れない単語を耳にして凌統はハロウィンと尋ね返した。
なぜだろう、この国の言葉でない気がする。
「それって何だい?」
「遥か西域で行われている祭だそうです。親しい仲の者に菓子をねだり、もらえなかったら悪戯をするとか・・・」
「随分変わった祭だねぇ」
「えぇ。ですが楽しそうだと思いませんか?」
実はあやかってみたのですと言い、懐から小さな菓子を取り出す。
凌統の手にちょこんと乗せるとにこりと笑った。
「本当は公績様に悪戯を仕掛けてみたいところですが、それでは卑怯ですね」
「俺は別に悪戯されてもいいんだけどね」
「まぁ、不思議なお方」
凌統は渡された菓子を一口かじると、あげた本人の口に残りを押し込んだ。
「俺の食べかけだけど、はろうぃんだから。美味かったよ、ありがとう」
「こ、公績様・・・っ、お戯れがすぎます!」
「はろうぃん、だろ?」
背を向けて歩き始めた凌統の背中に、おそらく真っ赤な顔をしているであろう女性の叫びが突き刺さった。
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