夫婦の日
1122の日



 うーんと難しい顔をして新聞を読んでいる夫を見つけた。
どうしようと悩みきった声を上げて唸っている姿は、思わず手助けしたくなる。




「どうしたの? すごく難しそうな顔してる」

「え、顔に出てた!?」

「うん。何か事件でもあったの?」



 魔物退治だったら手伝える自信はある。
今も昔も武器を握るのは苦手だけど、呪文だったら頑張れるし。
剣を手にして戦う彼にバイキルトをかける時なんて、最高に頑張っちゃう。



「いやいや、そんな物騒なことじゃなくてさ・・・。
 ・・・あのね、今の生活に満足してる?」



 突然尋ねられるとびっくりする。
本当にどうかしたのだろうか。
いつもはそんなスライムが最弱だっていうのと同じくらい当然なこと、訊きもしてこないのに。



「うん。だって2人で一緒に暮らせるし。あなたのおかげで今私はここにいるんだよ?
 嬉しくないはずがないじゃない」

「そ、そうだよね! 僕もすごく幸せだよ。
 じゃ、じゃあさ、その・・・、生まれ変わっても一緒になりたいって思ってる?」




 次は返答に詰まってしまった。
別に嫌とかそういうのではなくて、考えたこともなかったから。
私も彼も人間と違ってものすごく長生きするから、そういう考えに至ってなかったんだと思う。
この際私が生まれ変われるのかなんて、考えちゃいけない。



「い、嫌なの!? やっぱり何百年か何千年か知らないけど、それだけ長く一緒に暮らしてたら飽きがくる!?」

「ち、違うよ!! 飽きるだなんてそんなこと思わないよ!
 一緒になりたいなって思うよ、だって私の旦那様は1人しかいないもん」




 この人、いつから私にこんな小っ恥ずかしい台詞言わせるようになっちゃったんだろう。
どちらかと言えば、私が言うよりも言ってほしいのに。



「あ、ありがとう・・・! 僕も、君以外の奥さんなんて考えられないよ!
 やっぱり新聞のインタビューに答えた人間たちの考えが凝り固まってたんだろうね!」

「う、うん・・・?」




 結局何の話かわからないまま、朝からおじいちゃんに叱られるくらいに惚気てしまったのだった。