1.ありがとう。ずっと一緒にいられなくても好きだよ
口の前に差し出された一口大のケーキを、複雑な笑みでもって食べる。
甘いのは相変わらず苦手だが、誕生日ケーキ、しかも愛しの婚約者の手作りとあれば食べない男はいないだろう。
無論、やや一方通行で盲目気味に婚約者を愛しているイザークも、例外ではなかった。
「イザークは歳取ってもあんま変わんないわね」
「それは褒めているのか?」
「若いってことよ。いいなー、私もいつまでも若々しくいたい」
「まだ若いだろうが、それほど歳を取ったわけでもあるまいし」
確かに、老いを感じるほどに生きてはいない。
ただ、戦争が終わって身体を持て余しているから、急な環境の変化についていけなかった。
昼夜を問わず出撃していた当時が懐かしいとは思わないが、いささか暇ではあった。
「これからどんどんイザークは忙しくなるんだっけ」
「そうだな、やらなければならないことは、探せばたくさんある」
「お手伝いも、ずっと一緒にいるってこともできないけど、私は応援してるからね」
「ありがとう。忙しさにも暇はできる。その時に結婚しよう」
「いいね、それ」
できれば私の誕生日の時にプロポーズしてほしかったなー。
口ではそう言いつつも嬉しげな未来の妻に、イザークは柔かく笑いかけた。
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