2.予感していたお別れまでの大切な時間に
行ってきますと声をかけていたのを見てから、どれだけの時間が経っただろう。
マルチェロは、ぐずぐずと愛妻との別れを惜しみ続けて早30分の同僚に向かって声を荒げた。
「いつまでそうしている! お前もとっとと家に入らんか!」
「そうやってすぐに怒鳴り散らす。僕の奥さんなんです、勝手に叱らないで下さい!」
「知ったことか!」
文句を垂れたかと思えばまた妻といちゃつき始めた青年に、マルチェロは本気でメラゾーマをぶつけてやろうかと
殺意めいたものを覚えた。
数年間離れ離れになるわけではないのだ。
たった3日、サザンビークとアスカンタと訪ねるだけなのだ。
マルチェロは、僕が居ない間は絶対に知らない人を家に入れちゃ駄目だよとか、
勝手にククールと2人で遊びに行っちゃいけないよなどと言い聞かせている声を耳にし、大きくため息をついた。
彼女は子どもではないのだ。
見ず知らずの者と親しくするはずがない。
ククールに関しては、自分からもきつく言っているので無茶はしないに決まっている。
「あの・・・。そろそろ行かないと本気でマルチェロさん怒るよ?」
「もう怒っている」
「す、すみませんマルチェロさん・・・。ほら、3日後にはまた会えるから行ってらっしゃい?」
「3日ってどれだけの時間かわかる!? 4320分だよ、259200秒もだよ!?」
そんなに長い時間耐えられないよと叫ばれても、どうしようもない。
マルチェロはうるさいと一喝すると、喚く近衛隊長の首根っこを掴みルーラを唱えた。
毎度お手数おかけしてすみませんと謝罪する元弟子には、もっとしっかりしろと檄を飛ばす。
「強引です、これじゃ拉致ですよマルチェロさん!」
「だったらお前は公務執行妨害だ」
2人の妙に息の合った言い争いは、トロデーンの名物となりつつある。
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