3.たくさんの小さなごめんなさい
城から帰ってくるなりごめんなさいと頭を下げられ、馬超は驚いた。
お帰りなさいよりも早く謝罪の言葉とは、何か重大な失態でも犯したのだろうか、我が妹は。
「何があった」
「私にとっちゃどうでもいいんだけど、兄上にしてみたら大事件が・・・」
「だから何だと言っている」
怒らないと尋ねられ、鷹揚に頷いてみせる。
たった1人の可愛い妹なのだ。
まさかそこまで目くじらを立てるようなことはやっていないだろう。
馬超は心に兄としての威厳と余裕を持たせ、妹の謝罪を快く許すことにした。
「実は、墨をどばっと零しちゃって・・・」
おずおずと差し出されたのは愛用している勇ましい兜。
猛獣をかたどった面と、戦場を彩る真っ白な毛が・・・・・・、どす黒く染まっていた。
白さなどどこにもない。
どこを見ても、綺麗に黒染めに仕上がっていた。
「・・・これは・・・・・・」
「ごめんなさい兄上! 色、どうしても落ちなくて・・・!
悪いけど兄上、今度からは黒染めの兜で出陣して?」
怒る気力も起きない。
馬超は手渡された墨の匂いも芳しい新生兜を見つめ、深く深くため息をついたのだった。
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