4.君がいない世界でひとり



 穏やかな昼下がり、ベルがラックのカフェでくつろぐ一組の男女がいた。




「ククール、今も色んな女の人口説いてるの?」

「たまにはまともな仕事もやってんぞ」

「・・・否定はしないんだね・・・」




 定職に就かず昼間から街中、しかもカジノをうろついている友人に、は困った顔を向けた。
今はまだ若いし体も動くから日々の生活に触りはないだろうが、10,20年後はどうだろう。
老いて衰えた体では、一攫千金を狙ったゴールドマンなどは倒せまい。
は本気で友の人生を案じていた。
世界に平和をもたらすという大目標、大義名分がなくなり帰るべき場所もないククールは、定職も定住の地もない風来坊だった。




に頼んでお城に「やだね」

「回復呪文は得意なんだから、病院とか神父さんとかは?」

「女だらけの修道院に神父として行けるんなら」




 冗談のようで思いきり本気の発言に、はぺしりとククールを叩いた。
人が心配しているというのに、なぜ当事者はこうも楽天的なのだろうか。
彼が必死さや本気を見せるのはの前でだけだ。
に対するのと同じように、何か1つの仕事に真面目に打ち込めば大成するだろうに、恨めしいったらありゃしない。




「せめて身を固めるくらいしたらどうかな。そしたら生活にも責任感とか出てくるよ?」

「生憎、俺は誰か1人のものじゃなくてみんなのものだからね」

「誰にも看取られないで死んじゃうよ」

、来てくれんじゃねぇの?」

「だってククールどこ住んでるのか知らないもん」




 音信不通から消息不明になるんだね。
さらりと恐ろしいことを言い放つ天使に、ククールは本日初めて己の老後を気にしたのだった。




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