5.大切にしているつもりだった
バースはいい加減怒っていた。
これで何度目だというのだ。
メタルスライムには一向に効果を発揮せず、人体にばかり被害を及ぼす。
気が付けば毒針に対して耐性がついてしまっていて、
意識不明にならず苦しみ悶えるに留まるようになってしまったではないか。
バースは、正座したリグの前に置かれている毒針を指差した。
「これ使うの今後一切禁止! そんなに俺のこと嫌いか、リグ」
「別にバース狙ってるんじゃなくて、バースの近くにいつも偶々いるメタルスライムを狙ってんだけど」
バースは毒針を手に取ると、隣に控えているエルファにそのまま手渡した。
これがいつまでもあるからいけないのだ。
こういった隠れた凶器はとっとと処分するに限る。
「エルファ、そこの武器屋で売ってきてくれるかな」
「バース、いくらなんでも売るのは酷いだろ。俺の愛用品が二束三文で・・・!」
「使えねぇんだよ、これ」
数分後、武器屋から戻ってきたエルファの手には、出かけた時と同じく毒針が握られていた。
「エルファ?」
「それがね・・・。使い込みすぎて中古品どころじゃなくなってるから、買い取らないって」
「リグ、お前もう少し大切に使ってやれよ!」
要らない子扱いされて戻ってきた毒針を取り上げ、リグはそのまま持ち物入れに突っ込んだ。
これに入れておけば文句は言われない。
しかし心外だった。
武器屋の親父の言い分を聞く限りでは、まるで使い方が悪いようだ。
大事に大事に、ここぞという時にしか使わなかっただけにショックだった。
「あ、リグ、毒が効きづらいって言ったら新しく塗り直してくれたみたいだよ!」
「ちょっ、エルファもリグと共犯者!?」
バースの身の危険度が、更に増した。
元に戻る