7.君の向かう世界が幸せで満ちていますように
極めて穏やかに、半ば強制的に人里離れた教会に呼び出されたヤンガスたちは、
これから行われるであろう親友の暴挙をあれこれと想像していた。
大事な話があるから絶対に来てねと満面の笑みで言われた時は、真っ先にククールを疑った。
彼を怒らせたりするのはククールしかいないというのが仲間内での常識だ。
そう思っていたのだが、集合場所にククールももれなくいたことからヤンガスとゼシカの予想は外れていた。
「こないだどっかの誰かが、僕のが一番可愛くないってランク付けしてたんだ」
「ブログに書いてあったじゃない。あれは全然可愛いから、が可愛くないわけではないって」
「でも最下位だったことは事実だよ。信じられない、あんなに可愛い天使なのに。
書いてる当時は全く知らなかった新作ドラクエ9の主人公設定と天使って部分が同じだったとか、
僕もびっくりしたくらいの先見性あるキャラなのに」
色々すごいことだらけなのにどこ見て最下位とか言ってんのさと憤る青年に、ヤンガスたちはため息をついた。
ここまで言われれば、待ち受ける作戦は絞られてくる。
上位の連中を片っ端から葬り去るか、そもそもの元凶たるランク付けを敢行した犯人を懲らしめるか。
後者の方が圧倒的に楽だ、ぜひ後者にしてほしい。
「あ、兄貴は何番目が良かったでがす?」
「もちろん一番だよ! とりあえず下から潰してくんだけど」
「やっぱ実力行使なのか? お前が一番だって思っときゃそれでいいじゃん。可愛いって」
「の愛らしさを知らないのは世界の大損だよククール。
それとも君は国棄てようとしたお姫様ややけに俗っぽい神様、果ては滅茶苦茶なことしかしない妹キャラが好きなの!?」
お決まりのごとく八つ当たりされ始めたククールは、泣きたくなってきた。
姫と言われても彼はミーティア姫しか知らないし、俺らの世界の神様は本人はともかく、信仰する人々が俗人だっただけだ。
妹なんて、心当たりが全くない。
俺、いけ好かない兄貴しかいないし。
何の事を言っているのかさっぱりわからないククールは、逃げ出したくなった。
むしろ、様々な事情を知っている彼が怖い。
「最終的な目標は超絶強くて可愛いスーパーヒロインだよ。打倒、ガンダムのあの子!」
暴走し始めた彼を止めるのはしかいない。
ククールの決死の視線を受け止めたヤンガスは、どさくさに紛れ教会を飛び出すとトロデーンへと飛び立った。
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