5.独占
「今年は甘いのでよろしくな、フィル」
「ちょっ・・・、糖尿病なるよリグ」
恋人たちの宝石の季節になったある日の夜、フィルが造っている町にリグがひょっこり現れた。
ライムたちはいない。
どうやら宿屋から抜け出してきたらしい。
「わざわざ強請りに来たわけ? 相当性格悪いわよ、それ」
「いいじゃん別にもらう権利はあるわけだし、どうせもらうなら好みのやつがいい」
飄々として言うリグに、フィルは枕を投げつけた。
もちろんそれはリグにしっかりと受け止められてしまうのだが。
「ねぇ、どうせ来るなら昼にしてよ。
私明日も早いんだから。それに顔もよく見えない」
「無理だって。日が出てるうちは俺ら旅してるし、宿屋にだって財政上毎日泊まるわけじゃないんだから」
それに夜だったら誰にも邪魔されないし人いないし、とリグはぼそりと付け加えた。
宝石という名のチョコの催促は二の次。
本当はただ、フィルに逢いに来たのだ。
翌日ライムとバースに叱られからかわれることを覚悟した上で。
「・・・じゃ、当日の夜にもらいに来るからちゃんと作っといてくれよ」
「ばっちり苦いの作るからね」
「は? どうせできないくせに」
恋人たちの宝石の当日の夜、リグを待つフィルの手の中にはべらぼうに甘ったるいチョコがあった。
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