04.「月がとても青ひですね」
天変地異が起こったらしい。
リグは空を見上げ、不気味な色に輝く月を指差した。
月の色までもが青くなってしまった。
ただでさえ地上には魔物が溢れているというのに、今度は何が起こるのだ。
リグは月の変貌をさして気にかけることもなくせっせと盾を磨いているライムに声をかけた。
「なあ、月が変なんだって」
「はいはい」
「見たのか? なあライム、月の色がおかしい」
「リグ、眠たいなら早く寝なさい」
「ライム」
「あのね、リグ」
ライムは手を止めるとリグに向き直った。
よく見なさいと言われ、見たと反論する。
よく見ていないのはライムの方だ。
剣や盾ばかり見て、少しは風情を楽しむということをしないのか。
ライムはバースと名を呼んだ。
バースまで呼んで、寄ってたかって叱るつもりなのか。
バースははあと小さくため息をつくと、手のひらを月へと向けた。
メラミの火球が月へと飛んでいく。
届くわけがないのに何をやっているのだこの馬鹿賢者は。
リグはバースの行為を鼻で笑い、そして次の瞬間視界に飛び込んできた光景に目を疑った。
月が青くない。
いつもの色に戻っている。
「どういう・・・」
「どうもこうも、ドラキーが月の光に合わせて踊ってただけだろ。
ドラキーも月見したくなる時期があるんだよ」
「そんな・・・」
「そんなもこんなもそうなんだよ。ったく、ライムの邪魔するのやめろよ」
ショックだ。
ドラキーの習性など知らなかった。
リグは再び煌々と照らされるようになった月の光の下で、がくりと肩を落とした。
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