05.あーあれだ、そのーあのー…… ああもう分かってくれよ!



 大事な忘れ物に気付き教室へと向かう。
今日に限って携帯電話を置き忘れるとはとんだ失態だ。
今日は、部活が終わったら彼女に電話すると約束していたのに。
半田は勢い良く教室の扉を開いた。
放課後も放課後、外は暗くなりかけているというのに窓辺でが誰かと電話で話し込んでいる。
あれ、あいつ機種変えたのかな、なんか俺のと似てる気がする。
の通話の邪魔にならないように静かに引き出しの中を探る。
ない。どこにもない。
半田は通話中のの方をつついた。




「何よ」

「俺の携帯見てね?」

「あ、これこれ」

「な!? ちょっ、なんでお前が持って「あ、もしもし?」




 は半田の口元に人差し指を当てると、再び通話を始めた。
人の電話を使っていったい誰と話しているのだ。
半田は注意深くの会話を聞くことにした。




「へえ、半田がそんなこと・・・」

「いやいや、私修也とはぜんっぜん!」

「へ? いや、だから修也って呼ぶのは幼なじみの癖ってだけで」




 ようやく話が終わったのか、が電話を切り半田へと返して寄越す。
電話を受け取った半田はすぐさま発信履歴を確認した。
頭が真っ白になった。



「おま・・・、なっ、こ・・・」

「大丈夫大丈夫、変なこと言ってないから」

「いや、そうじゃなくて! え、もしかしてばれた・・・!?」

「半田に彼女がいること? うん、電話鳴ってたから取ったんだけど、それで初めて知ったよ。
 いい子そうじゃん、良かったねぇ」

「なあ、なんですぐ俺に代わんないわけ!? そこは普通代わるだろ!?」

「私との話楽しんでくれてたしいいかなあって。私のこと砂糖菓子みたいだって! やっぱわかる人にはわかるのね」




 ああいういい子は大切にしなくちゃ駄目だよ真一くんと歌うように囁くと、は鞄を手に取り教室の外へと歩き出した。
迎えにやって来た豪炎寺と合流すると、は教室で呆然と突っ立っている半田を顧みた。



「彼女さん、明日のデートの待ち合わせ30分早くしたいって。長く一緒にいたいなんてほんと愛されてるよねえ、半田」

「週末お泊まりしてる夫婦に言われても皮肉にしか聞こえねぇよ!」

「夫婦じゃないもんただの幼なじみだもん。彼女さん勘違いしてるみたいだから要訂正! わかった?」

「絶対してやんねぇ!」



 爆弾を連鎖破壊させ帰って行ったを見送る。
豪炎寺と今日の夕飯トークが聞こえなくなったことを確認すると、半田は改めて電話をかけ直した。




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