06.抱き殺してやりたい
おーいと呼ぶと、ぱあっと顔を輝かせぱたぱたと駆け寄ってくる。
両手を広げおいでと言うと、ぎゅうううっと抱きついてくる。
可愛い。可愛すぎてこのまま家に持って帰りたいくらいだ。
そうだ、持って帰ろう。
風丸はを抱き締めたまま、一緒に帰ろうと宣言した。
「、大好きだ!」
「うん、私も大好き! 風丸くんのことだーい好き!」
「じゃあずっと一緒にいよう。ずっとぎゅってしてていいか?」
「うんうん、いるいる!」
うわあ、やってしまった。
鬼道は忌まわしき惚れ香水を手の中で握り締めた。
どこまでが通常でどこからが薬の効果なのか、半田とは違う意味でわからない。
「あのね風丸くん、私前からだけじゃなくて後ろからもぎゅってしてほしいなあ」
「後ろからってこうか? うーん、俺はの顔が見えないからちょっと嫌かも」
「そっかあ・・・」
「寒い時はぎゅってしたまま寝たら温かそうだな」
「きゃあそれ素敵! じゃ、今度風丸くんとこお泊りする時やってみよ!」
「今度っていうか今日からおいで。今日からずっとおいで。風丸家の一員になろうぜ」
「えっ、それってもしかして風丸くんのお嫁さんか妹さん!?
すっごく嬉しい、不束者ですが末永くよろしくね!」
放っておいたら輿入れまで決まってしまった。
鬼道はそろりとホースを手に持った。
風丸に様々な意味で頭を冷やしてほしい。
しかし、いつもとあまり変わりがないので放水に躊躇ってしまう。
第一、あれだけぴったりとがくっついていてはも水を被ってしまう。
が濡れたら、それこそ今度は風丸と一緒にお風呂だ。
駄目だ、打つ手がない。
このまま一晩、風丸が風呂に入って香水を落とすのを待つしかないのか。
強く握り締めた鬼道の手の中で、香水がじわりと染み出した。
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