01.今日こそほだされない
ずるいと言われても、ないものはないのだからどうしてやることもできない。
欲しいと言われても、ない袖は振れない。
装備を揃えたくなる気持ちはわかるしその意見には両手を挙げて賛同するが、無理なものはどうやっても無理なのだ。
リグは使いこんだゾンビキラーを抱えじいとこちらを見つめているエルファに、ごめんと声をかけた。
本来ならば謝罪もあまりやりたくなかったりする。
「この町にもそれ以上の武器はないんだよ。だから最後までゾンビキラーで行ってくれるかな」
「私が力がないから?」
「賢者に適性あるのがそれくらいなんだよ。ライムみたいに前衛に向いてないってのが一番だけど」
「でも私、ずっとこれなんだよ? 新品のが欲しいなあとか、そういうのも駄目なの?」
「言うほどエルファ使ってないだろ。どうしても欲しいんなら彼氏に頼め、バースに」
アレフガルド一の名家の御曹司の力があれば、ゾンビキラーも賢者の杖もいくらでも用意できるはずだ。
よくよく考えれば、王者の剣も彼のポケットマネーを使えばどうとでもなっていた気がする。
気付くのが遅すぎた。
あの頃の苦労を返してほしい。
「バースお願い、私強くなりたいの!」
「んんんんんー、そんな顔されてもなー・・・。
何をいいように勘違いしてるのかわかんないけど、うち、財テクとかできない世間知らずの田舎者集団だぞ」
金があったら盗賊とかやらなかったしな、ははは。
どこも笑えないジョークをぶちまけるバースに、エルファはそんなあと声を上げた。
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