05.さかさま、ありさま
どうしても欲しいものがある。
それはおそらく、4歩ほど先に見えている宝箱の中に入っている。
インパスを使わずともわかるのだ。
元盗賊の当てにならない勘を頼ったとかではなく、残された空けざる宝箱がそれしかないから、
それに入っていなければおかしいだけの話なのだ。
リグは巨大なサイコロを抱えると、今日何度目かもわからない気合いの入ったかけ声を上げた。
「そうやって頑なに自分でチャレンジするところはすごいと思うけど、いい加減自分には向いてないってわかんないものかな」
「攻撃も回復もできるリグはすごろく場攻略には向いてると思うけど。ほら、私だと傷ついても薬草でしか癒せないし」
「そうなんだけどそうじゃないんだよなあー。
ライムだってもう見飽きたろ、あれ目指してサイコロ振ったリグが落とし穴に吸い込まれてんのは」
「そりゃあね、そうなんだけど・・・」
隣で頑張れリグ、次こそいけるよと根拠のない持論を手に応援するエルファをちらりと見て、小さく頑張れと声援を送る。
預言者でなくともこの結末はわかっているつもりだ。
よーしいくぞーと声を上げ勢い良くサイコロを振ったリグの姿が、床に吸い込まれ消えた。
どうしても攻略したいなら、そろそろ巷で噂の性格が変わる本とやらに頼ってみるべきなのではないだろうか。
バースは腰を押さえながらよろよろと現れたリグの前に、一冊の分厚い本を突き出した。