09.たまには真面目な顔もするんだよ



 焚火から離れた草むらで、旅の同行者がしゃがみ込んでいる。
何をしているのか気になって背後に忍び寄ると、片手には何束もの草が握られている。
決して大きくはない手にぎゅうと握り込まれているそれはかなりの量があるように見えるが、
それでもなお足りないのか、もう片方の手は一心に草を千切っている。
薬草の補充をしてくれているのだろうか。
は小さな背中に向かってそっと名を呼びかけた。


「何してるの?」


「ひっ・・・、ああ、勇者様かあびっくりした」


「驚かせてごめん。薬草摘みなら僕も手伝うよ」


「ほんと? ありがと、じゃあ薬草はいいから満月草と毒消し草お願いしてもいい?」


「まん・・・えっと、これ?」


「違う違う、満月草はこっち。今手に取ってるのは食べたらお腹壊すやつ」


 これとこれは摘んでいいよと指示してくれるが、正直違いがどこかわからない。
あわや大惨事となるところだった毒草と満月草を手に取り見比べる。
わからない。
困ってしまい横を見ると、にこにこ笑顔と目が合う。
貸してと言われ2つの草を差し出すと、目の前でくるりと葉の裏側を見せられた。


「満月草の裏はつるつるで、悪い方はトゲトゲしてるの。どう、わかる?」


「・・・全然違う!」


「でしょ! ま、わかんないうちも毒消し草と一緒に持っとけば死にはしないからそんなに難しい顔しなくても平気だよ」


 眉間に皺寄ってる、イケメンが台無しだよと言いながら頬をつつかれると、表情を崩すしかない。
は葉の裏側をもう一度確認すると、トゲトゲした方を袋に仕舞った。




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