1.「お帰りなさいませ、ご主人様」
今日も疲れた。
疲れきった体を引きずって自宅へと帰還した趙雲は、出迎えた人物を見てますます疲れが増した。
なぜここにと最初に尋ねるべきだろうか。
それとも、なぜあなたがと尋ねるのが先だろうか。
「今日も随分とお疲れのようで。湯殿の支度はできてますよ」
「そうか・・・・・・」
「明日も朝から早いんですよね。今日はすぐにお休みになった方がいいですよ」
「・・・・・・」
「どうかしましたか? もしかして私がここにいることが言葉にならないくらいに嬉しいんですか?」
「・・・なぜ馬岱殿がここにいるのか教えてもらえぬか?」
何なんだこの男は。
ここまで憎まれているのか、悪い意味での夜這いを仕掛けに来たのか。
馬岱は気まぐれですと答えると、にっこりと笑いかけた。
綺麗な笑顔から吐かれるのはいつだって毒だ。
趙雲は額を押さえため息をついた。
「あの子だと思ってましたか? 本当はあの子だったんですが、上手く丸め込んで私が来たんです」
「・・・どちらであっても来なくて良かったのだが・・・・・・」
「男の一人暮らしは寂しいであろうと思い、気を利かせたというのに・・・」
「・・・・・・」
なぜだろう。
自宅なのにものすごく疎外感を感じる。
気が抜けない、疲れが蓄積する、夢だと思いたい。
趙雲は馬岱を見下ろした。
彼が女だったならば、相当の数の男は痛い目に遭うことだろう。
毒の塊と思うこともあったかもしれない。
「従兄上はともかく、あの子に会いたいのならばまずは私に勝つことですね。
また明日こちらにお伺いします、あの子の代わりに」
「・・・もう来ないでくれ・・・・・・」
これから毎日馬岱の出迎えがあるのだろうか。
趙雲の胃痛との戦いが幕を開けた。
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