4.甘いのはお好きですか?
意外のような話だけど、私はロマーノと一緒にクリスマスを過ごしたことはない。
2,3週間くらい前までは普通に会ってるけど、イブとか当日は会ったことがない。
総本山で色々忙しいからと思って、会いたいと私が言わないからだ。
「別に割りたくて割ってんじゃねぇんだよ。皿が勝手に割れてくんだ」
「わかるわかる! 私も、別に零したいわけじゃないけどインク零れたり墨零れたりしてるもん!」
「スペインとこのはいいけど、さすがに教会のはやばいからな。今年はどうしようか迷ってんだよ」
だからさ。先程まであれだけ饒舌だったロマーノが急に口篭った。
どうしたんだろう、急にどこか具合でも悪くなったのかな。
それとも言葉が続かなくなった? おじいちゃんでもあるまいしそれはないよね。
どうしたのと尋ねると、いきなり目の前にくしゃくしゃになった紙切れを出された。
よく見てみると、コンサートのチケットだった。
日付は12月24日、これは期待していいんだろうか。
「実は毎年用意はしてたんだけど、この時期になったら急に連絡しなくなるだろ。
だから今年こそと思って早めに用意してみた」
「連絡しないのはロマーノが忙しいんじゃないかと思って遠慮してたからだけど・・・」
「暇だよ、暇だから駆り出されてんだ」
「そうだったんだ。じゃあ今年は暇じゃないってわけだ?」
「一緒に行ってくれるんならな」
答えはもちろん決まってる。
こんなにくしゃくしゃになってるチケットが果たしてチケットとしての役割と果たしてくれるのかは疑問だけど、
駄目だったらロマーノと一緒に美味しいもの食べに行こう。
お店が満席だったら、材料買って美味しいもの作ってもらおう。
何百年とクリスマスを過ごしてきたけど、今年は今までで一番素敵なクリスマスを過ごせそうだ。
「えへへ、日本さんに今年は一緒にお正月の買い出し行けませんって連絡しとこ」
「年末までじゃなくて、世界の終末くらいまで一緒にいてほしいけど」
「・・・たまにすごいこと言うよね、ロマーノ」
愛されている限りはどこまでもいつまでも。
今年のクリスマスプレゼントは、絶対に割れない瓶に零れんばかりの愛情詰めたものにしよう。
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