8.住み込みハウスメイドの不都合
言いつけられる仕事は厳しいし手抜きは許されないが、時間にも厳しいマルチェロは、
ある意味では学生アルバイターにとってはありがたい存在である。
時間外労働は今まで一度たりともさせられたことはない。
マルチェロ曰く、学生の本分である学業を疎かにしてはならないし、
学校の成績が悪かったのをこちらのせいにしてほしくないからとのことらしい。
何はともあれ、仕事を真面目にしさえすればきっちり定時に帰宅の途につける。
これはにとっても非常に嬉しいことだった。
彼が住んでいる家は、あまり長時間家を空けていると何が起こるかわからないパルプンテハウスなのだ。
「、新しいお仕事はどうですか?
ミーティアも一度アルバイトというものをやってみたいです」
「大変ですけど楽しいですよ。学校にもそこそこ近いですし。
でも姫には向かないでしょうねぇ」
「そうですか?」
「それに姫の学校はバイト禁止されてるでしょう。王も反対しますよ」
「ミーティアやっぱり転校しようかしら・・・。
そしたらの大好きな方ともお近づきになれて、のお手伝いができるでしょう?」
「・・・それは」
ミーティアには彼女のことをあまり話していない。
同じ学校の生徒としか教えていなかった。
温室育ちでやたらと好奇心の強いミーティアのことだ。
情報を与えすぎると暴走して余計な事をやりかねない。
は、思わぬところから己の存在が露わになるのは避けたかった。
隠しておきたい裏がたくさんあるのだ。
「そういえば、今日旅の道化師さんがいらしたんです。面白い芸と面白い物を見せてくれました」
「それ、また押し売りとか訪問販売じゃ・・・」
「可愛いでしょうこれ。最近はこのようなドクロのついた指輪などが流行っているんですね」
ミーティアの学校は流行に鈍感ですとぼやく彼女の手から指輪をひったくる。
どこに呪いのアイテムを可愛いだの流行りにする女学生がいるのだ。
また変な物を売りつけられて、これだからお嬢様は。
返品は利くのだろうか。無理だろう、おそらく。
「いいですか? 本当に変な物ばかり買うのはよして下さい。
何ですか姫の部屋、どこぞのホラーハウスですか、魔女の館ですか」
「乙女の部屋を覗くなんてあんまりです。の部屋だって、ベッドの下に色々隠してるくせに」
バックナンバー順に整理してあげたのにと余計な気を利かせる同居人に、は返す言葉を失くしてしまった。
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