9.猫耳はいかがですか?
前方より全裸の男接近。
いつも思うけど、申し訳程度につけられてる股間の薔薇はどうやってくっついてるんだろう。
まさかフランスの肌に接着剤とかで?
・・・いやいや、さすがにそれはないか。
たぶん映倫の施しなんだろう。
「今日も可愛いねぇ、お兄さんとイイコトしようよハァハァ」
「ねぇフランス、4つも耳がついてたら邪魔じゃない?」
「可愛い声がよく聞こえるからむしろ嬉しいくらいだよ!」
男なのに猫耳。
猫耳なのに全裸。
猫耳付けときゃ何だって可愛いわけじゃないのだ。
汚物を見慣れてしまったばかりに全く抵抗がなくなった私をどうしてくれる。
いい年した男の裸見て軽口叩く女なんて、きっと私くらいだ。
せめて私にスイスみたいな厳格な人がいたら。
変わっていたかもしれない人生を今さら嘆いても仕方がない。
「フランスは人の耳と猫耳とどっちが好き?」
「猫耳の方が断然可愛いよね!」
「ふぅん・・・。じゃあその耳、切り落としたげる」
出刃包丁ならざっくりすっぱり切れるだろう。
あ、フランスの顔から血の気が引いた。
強張った顔で笑って見せてるけど残念、ちっともかっこよくない。
「な・・・、急にスプラッタが好きになっちゃったのかな?」
「えー、だって1人に4つも耳あるのってずるいじゃーん」
「凶器持ってる女神様とか、新境地切り開かなくていいよ!?」
「私が切るのはフランスの耳だもん。ほら、ゴッホとお揃いじゃん」
怯えてるフランスを見ていると、なんだか不思議な気分になった。
老大国だなんだと言われてるけど、やっぱりフランスはそこまで強くないのか。
ボジョレー・ヌーボータダでたくさんあげるからと縋られ、ようやく包丁を仕舞う。
「冗談でもそういうのやめて、ほんと・・・。ここに何万人の人が住んでると思ってるわけ・・・」
「あぁ、じゃあ別のとこなら良かったのかな。
薔薇のあたりとかは切ってもフランスにしか害は及ばないし、むしろ世界中から感謝されるよね」
「もっと駄目!」
ほとんど泣いて逃げ去ったフランスが残した猫耳バンドを拾い上げる。
きっとこれ、日本さんにはすごく似合うだろうな。
変態のドロップで手に入れた戦利品を手に、勝手に持ち出した出刃包丁を元に戻すべく雲の上の実家経由で帰るのだった。
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