お題・2
02.ただ笑っただけの顔が、どうしてこんなにも忘れられないのか



 笑顔らしい笑顔を見たことはない。
笑みをよく浮かべる人物だとはなんとなく知っているが、彼女の浮かべる笑みは自分に向けられたものではないので
本当の温もりはわからない。
温もりと別れて久しい生活を送っている身には、笑顔の温もりは眩しい。
望んでも得ることができない温もりが遠い。
欲しいと言えない立場の悪さに自嘲したくなる。
もっとまっとうな、太陽の下を堂々と歩ける人生を送っていれば、あるいはねだれたかもしれない。
笑って下さい、声をかけて下さいと言えたかもしれない。
それをされているのが憎い弟だというのが、心をより複雑にしていたのだが。




「起きたら、笑ってくれるのかな・・・」



 きっと彼女は笑いはしない。
焦った表情を見せ、一刻も早く仲間たちの元へ戻ろうとするだろう。
そうすることで彼女が笑顔を取り戻すのであれば、彼女の進む道を拒みはしない。
プローズは青ざめた顔色で眠り続けるライムへ癒しの光を送り続けた。





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