03.「噂だと思ってたけど」



 私、苛められてるんだ。
食後のデザートをつつきながら海外サッカーリーグの試合を眺めていたの突然の告白に、豪炎寺は黙ってテレビの電源を消した。
下らない嘘をつくなとお説教でも始めるつもりなのか、表情が険しい。
言うタイミングを間違えたか、でもサッカー観ててもつまんないしなあと反省と責任転嫁をしていると、ソファーに並んで座っていた豪炎寺が体ごとこちらへと向ける。
体勢まで変えるとは、今夜は本格的なお説教が子守歌になるようだ。
と呼ばれ、ははいと珍しくも殊勝に返事を返した。




「誰に苛められているのか正直に言うんだ。どんな苛めを受けているのかも教えてほしい」

「・・・へ?」

「へ?じゃない、真面目に答えるんだ。
 転校生は既存のコミュニティーに入りにくくてそういう標的になりやすいとは聞いていたが、まさかがそうだとはな・・・」

「いや、修也のせいで苛められてるんだけど」

「そうだとしたら尚更性質が悪い。木野たちはそれを知っているのか?」

「秋ちゃんは笑ってるよっていうか、だから修也が私にべったりなのがいけないんだって。
 『さんってあの豪炎寺くんと付き合ってるんでしょ、悔しいけどやっぱりお似合いだもんねー』は悪質な苛め文句だと思うわけ」

「・・・・・・」





 なぜだろう、にそう言われたことが他のどんな苛めフレーズよりも心に深く突き刺さる。
豪炎寺は幼なじみを守る姿勢から攻める姿勢に切り替えると、怒りの籠った声で幼なじみの名を呼んだ。




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