お題・5
05.物語のように



 魔物に襲われ囚われた姫君を助けてくれるのは王子様だと相場は決まっているが、現実は決してそうではない。
魔物に襲われた姫君を助けてくれたのは、異界からやって来た勇者だった。
彼が本当に勇者なのかはわからない。
異界では勇者と謳われ崇められていても、アレフガルドの地でも同じ評価を受けるとは限らない。
いかに勇者オルテガの息子だろうと、能力まで同じとは限らない。
ラダトーム城内のリグの評価は未だに高くない。
しかしローラはリグを好ましく思っていた。
取り立てて端正な顔立ちではないが、激戦を戦い抜いてきた凛々しい面構え。
多くを語らない思慮深い性格。
リグを構成するすべての要素がローラにとっては眩しく見え、彼の容姿言動は今でも心に深く刻まれている。
生まれて初めて抱く感情に、ローラは戸惑いを隠せないでいた。




「今はどこを旅しておられるのでしょうか・・・」





 感情の名前はわからない。
しかし、彼のことを考えているだけで心の中はアレフガルドよりも一足早く光が差し込んだように思える。
ローラは暖かな思いにほんのりと頬を染めた。





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