07.遠くから見つめた
橋がないなら作ればいい。
どこの独裁国家の元首の発言かと思いきや、我らが勇者様のお言葉である。
わかりきったことだが、橋はそう簡単に作れるものではない。
人力と知識が集まって初めて生まれる建造物で、作ろうと思い立ってすぐに完成するようなものではない。
そうだというのにこの勇者様は、いかに彼の王族の血が流れていようとあまりにも自由奔放すぎる。
バースは作れという言葉と共に指差された池を前に、無理と即答した。
本当にこいつは、賢者の使い方を明らかに間違っているとしか思えない。
「遠回りすれば着くだろ!?」
「遠回りするよりもここに氷の橋作った方が手っ取り早いだろ」
「滑って怪我しても回復してやんねぇぞ」
「表面荒削りの橋にしとけよ。俺らが転んでエルファにホイミせがむと申し訳ないし」
「エルファを出して俺を動かす気か!? 何なんだよリグ!」
「何って、勇者」
勇者だって楽したいんだよ、宝箱ごときに手間かけたくないんだよ。
宝箱ごときのために賢者の貴重な魔力を使わせることが一番の手間だとわからないのか。
バースは逆らえないリーダーの命令に、渋々両手に魔力を集めた。
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