バー・ルイーダで捕まえて
リグは、どことも知れぬ場所から世界を見下ろしていた。
この体験は初めてではない。
以前もこうやって、自分ではないが境遇は若干似ている同姓同名の青年たちの旅を眺めていた。
あの時はうっかり魔女っ子に心を奪われるところだった。
リグは人々から『リグ』と呼ばれている青年を見ているふりをして、桃色の髪をした娘を探した。
「あっ、あの子私と同じ格好してる!」
「ほんとだ、エルファとそっくり・・・だけど、持ってるもんは向こうがだいぶ物騒だな」
彼女もまた賢者なのだろうか。
エルファと同じ青いマントに白いワンピース、そしてサークレットを身につけた紺髪の女性へリグは視線を移した。
・・・本当に賢者なのか、彼女は。
そう思ってしまうほどに勇ましく棍を振り回し、そして魔物をボコボコにしている姿からは、
リグがいつも見慣れている癒しの賢者が窺えない。
何なんだあの撲殺賢者は。
バースよりも明らかに使い勝手の良さそうな美女を、リグは無性にスカウトしたくなった。
「なぁエルファ、2010年はバースじゃなくてあの子を仲間にしたらどうだろ。
絶対あの子強いよ、さっきから呪文唱えず全部力押しだし」
「そんな事言ったらまたバース泣いちゃうよ」
「エルファ、バースに甘すぎなんだってば」
リグとエルファはもう一度地上を見下ろした。
どこかで見たことがある気がするが、それはどこだろう。
確かキラーマシンと絡んでいたはずだが・・・。
彼女の素性に思い当たり、リグは当初の予定だったスカウトをキャンセルした。
「エルファ、やっぱ今年もバースでいいや。たぶんあの子、俺の敵だ」
「そうなの!?」
ガンダムvsキラーマシン。
撲殺賢者の逆襲はまだ始まったばかりである。
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