10.うずめた顔
雪で覆われた屋外テラスのテーブルの上に、可愛らしい雪だるまが2体置かれていた。
片方は、頭に赤い葉っぱが乗っている。
もう1体の方は少し小さく、手には木の枝が握られている。
そんな2体を眺めている、2人の男女がいた。
少女がせっせと雪玉を丸めている。
どうやら雪だるまを作っているのは彼女のようで、しかも、仲間たちを似せているらしい。
「2体仲良く並んでて、僕は雪だるまの僕がちょっと羨ましいよ。」
「今、ヤンガスを作ってるの。
とげとげが難しいな、帽子の部分。」
「あそこらへんに木の実の殻がたくさん落ちてるよ。
とげとげでちょうど良いんじゃないかなぁ。」
青年は少女の手元をちらりと見て、やや近くの木を指差した。
雪だるまに一生懸命な彼女も可愛らしいのだが、せっかく2人きりなのだから、
生身の自分と語らってほしいものだ。
そんなことを考えていると、いつの間にか隣の席が空っぽになっていた。
木の方向を見ると、そこにはしゃがみこんでいる少女の背中が見えた。
「少しは僕にも構ってよ。」
頭がもげないように、そっと自分に似せた雪だるまを持ち上げる。
ゆっくりと、けれども手の中で溶けないように注意しながら、もう1対の雪だるまに近づける。
雪だるまの口らしきものと口らしきものを重ねる。
でも、あんまりくっつけると壊れてしまうので、わずかに一瞬だけ触れさせた。
そんな些細なままごとのようなキスでも、生身の人間の方は顔が熱くなって、
思わず雪が積もったテーブルに顔を突っ伏してしまう。
「雪だるまの僕は幸せ者だね・・・。」
人間当人たちの間のわだかまりが氷解するのは、もう少し先のようだった。
(冬のソ○タ ではないですよー。)
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