10.夢を、見ていたの。
決して大きくはない家だった。
けれども、幼い私にとってこの島国はとてつもなく広大なものに見えた。
正直、少し不安だった。
四方を海に囲まれどこにも行けそうにないこの国を見守り、そして動かしていくのが。
せめて、わかりあえる人がいれば。
力を貸してくれる頼もしい存在があれば。
そう思い、私は三日三晩くらい思いに耽った。
どんな子が傍にいたら嬉しいだろうか。
同じくらいの年格好の子の方が話しやすいだろう。
私では気付けないことも、女の子ならば気付き指摘してくれるかもしれない。
この国に生きる人々に豊かさや幸せをあげられるような、そんな笑顔が可愛い子がいい。
所詮は子どものくだらない空想、絵空事。
そう思っていた、彼女を見るまでは。
「・・・え?」
「あなた、だぁれ?」
4日後私の目の前に立っていたのは、私と同じくらいの年格好をした女の子だった。
それも、思い描いていたとおりの。
だぁれと聞きたいのは私の方だった。
夢が現実になったのだ。信じられるわけがなかった。
「私は・・・、日本です」
「ふぅん・・・。じゃあ、私はだぁれ?」
「あなたは・・・・・・。あなたは、です。この国で私と共に歩んでいくんですよ」
「そっか。これからよろしくね、日本」
そう言ってにこりと笑った彼女は、とてつもなく可愛かった。
ほんの少し体を揺らされた気がして目を開けた。
目の前には不安そうな顔をした女性がいる。
目、覚めましたかと問う彼女に声に、ようやく先程まで夢を見ていたのだとわかった。
かなり昔の出来事だった。だが、あれがなければ今ここに彼女はいない。
「どうかしたのですか?」
「もう、日本さんったらこんなとこで寝ちゃうんだもん。立春過ぎてもまだ寒いんですからね」
「それで布団を・・・。でも、私は目が覚めてしまったのですが」
「いや、なんか・・・。きっとお布団かけたら私も眠たくなっちゃうからどうしよっかなあって・・・」
そう言いつつも布団を掛けてくれる彼女は、なんだかんだでよく出来ている。
さすがはこの世に登場させてからずっと躾けているだけある。
究極のメイドと言ったところか。
「あーあ、ねぇ日本さん、私もお布団に入っていい?」
「狭いですよ」
「くっつけば平気ですよ。わ、なんか昔みたいで懐かしいですねぇ」
一人用の布団に大の大人が2人入っているのだから狭いに決まっている。
そのせいかぴったりとくっついて早くも寝息を立て始めた彼女を見つめ、私も再び夢の中へと意識を飛ばすのだった。
(・・・寝顔はずっと同じなんですよね・・・。あどけなくて可愛い、かもしれませんね)
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