2.行っちゃ、嫌。
出撃前のがらりとした空間に、2人の男女がいた。
白い隊長服を身に纏っているイザークが、目の前の出撃準備万全な紺髪の女性の左頬にそっと口づけた。
「ねぇ・・・、どうして毎回ここにキスするの?」
儀式のように行われる口づけに疑問を抱いた彼女が、ある日イザークに尋ねた。
イザークは彼女の左頬を愛しげになで、ふっと笑いかけて答えた。
「昔お前が被弾して無人島に不時着した時があったろう? あの時貴様はここを怪我していたからな。」
「・・・そんなこともあったわねー。なつかし。」
彼女が乗る機体へと向かいつつ、イザークはなおも言葉を続けた。
「もう怪我なんぞ負ってほしくないからな。おまじないというやつだ。」
「なるほど。じゃ、そのおまじないを切らさないことを誓って、出撃します。」
コックピットに入った彼女はもう別人だ。
今は傷1つ見当たらない彼女の無事を願い、結局のところはもう1人の戦友の事も心配になって、
今日もイザークは自らも出撃していくのだった。
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