5.構って、下さい。
「バース、これは何の真似だ?」
「だから魔力をちゃんと持ってるのに使おうとしないリグ君のための特訓。」
甲板の上に色とりどりの魚がぴちぴちと跳ねている。
どれも焼き魚にすれば美味しそうだが、この男はいったい何をリグに課すのだろうか。
「エルファが魚食べたいって言ったから、今日はバーベキューをしようと思ってさ。」
「そこでなんで俺が出てくる。普通に調理しろよ。野菜は冷凍保存してんだろ?
それに俺の名前を君付けで呼ぶな、気色悪い。」
彼がそう言ったと同時にエルファが現れて、笑顔で冷凍野菜を皿の上に置いた。
どこをどうしてだか、バーベキュー仕様にきちんと切り刻まれている。
リグは嫌な予感がした。逃げようとした彼だったが、その首はバースによってしっかりと固定される。
「ライムも腹空かせてんだから、とっととベギラマして即席バーベキューしろ。
できるんならベギラゴンでももちろん構わないんだけど。」
「俺に命令する前に自分でしろよ。」
「フィルちゃんの前ではかっこいいとこ見せようと思ってスライム相手にギラやったのに、
同じくらい、もしくはそれ以上可愛らしく、かつ美しいエルファとライムの前ではやりたくない?
困るよ、そうやって女の子選り好みしてちゃ。」
ニコニコと効果音がつきそうなまでの笑顔で詰め寄るバースに、リグは今度は生命の危険を感じた。
やらなければ殺される、彼の人一倍優れた第六感がそう警告した。
「ったく・・・、やればいいんだろ、ベギラマーーーー!!」
彼のはなった炎の波が魚と野菜だけでなく、バースのマントのちょっと先を焦がしたのは、リグの怒りのせいだろう。
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