6.後ろから
「や、でもシンに見つかったらまずいだろ。一応あいつ彼氏だし・・・。」
「でも私は今のアスランが心配だもん。ほら、早く。」
ちょっぴり怪しい雰囲気の漂う部屋の入口でシンは立ち竦んでいた。
ソファーに座っている愛しい恋人の背中が彼の目に入る。
下を向いている彼女の口からは、楽しんでいる感ありありの声がする。
「どう、気持ちいい?」
「うん・・・。最高・・・だ。やっぱり女の子って柔らかいんだな・・・。」
「やだっ、アスラン動かないで・・・。」
シンの存在に気づく事もなく、まるで恋人同士のように語らう2人。
シンがこの状況を見て何も思わないはずがない。
気持ちいいとか、柔らかいとか、動かないでとか、自分という男がいるにもかかわらず、
アスランはなんて事を彼女に強要したのだろうか。
自分だってまだあんな事やこんな事をされていないし、してもいないのに。
「何やってんすか、人の彼女の手ぇ出して。」
「シ、シンっ!?」
突然のシンの怒声にソファーから落ちるアスラン。
アスラン、と慌てて叫ぶ少女の声が彼の耳に響く。
「俺よりあの人の方がいいのか!? えぇ!?」
「シン、何言ってるの? 私はただアスランに耳掃除してただけよ。
それよりもいきなり大声出して、アスランの耳がどうかなったらどうするの。」
「ありがとう、だいぶ良くなったよ。お前もそれくらいで怒るなよ、膝枕ぐらいで。」
そういい遺して颯爽と去っていくアスランの背中にシンは本日2度目の怒声を浴びせた。
「だからあんたが嫌いなんだよっ!」
シンはいまだに膝枕未経験者である。
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