05.「・・・・・・・・・鈍いな」


　試合に快勝し、フィールドがよく見えるスタンドの最も良い席から観戦していた幼なじみに大きく手を振る。
スタンド最前列に降りて来るなり今日もかっこよかったよーとへにゃりと笑い賛辞を送られ、ありがとうとこちらも笑顔で返す。
かつてのイナズマジャパンのご意見番のように、自分が所属しているチームのコーチに就かないかとは要請した。
しかしその度に私は観る専門だからとやんわりと断られ、言葉の通り毎試合欠かさず観に来てくれている。
アドバイスをするわけでも激励の言葉をかけるわけでもなく、ただ淡々と観戦しありきたりな感想を述べるだけ。
物足りないと思うこともたまにあるが、彼女が傍にいてくれるだけで充分幸せだと自身に言い聞かせては、幸せを噛み締めている。




「もっと俺が大きくなってプロリーグに入ったら、もっといい席で観てもらいたいな」

「超ＶＩＰ席ってやつ？　でもあれって結構スタンドの上にあるじゃん、あそこって見にくくなぁい？」

「じゃあどこがいい？　俺はやっぱりベンチが一番いいと思うけど」

「ベンチー？　んー、でも私はフィーくんと一緒に観たらフィーくんがあれこれ教えてくれるから一番好きって言ったらそれかなー」

「そっか。だったら今度うちで一緒にＥＵＲＯ杯観ようよ。俺、選手名鑑買ったよ」

「マジで！？　私まだイタリア語ブランクあって難しいからかってないんだよねー」

「俺が読んであげるよ」

「きゃあそれ素敵！　フィーくんやっぱり超イケメン！」




　一緒に住んだらずっと一緒に観れるよ。
それ超いいよねえ。
遠回しではやはりわかってくれなかったのか、さらりとプロポーズをかわし相槌を打つ愛しの幼なじみにフィディオは苦笑した。





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