06.惹かれる



 初めは仲の良いボーイフレンド。
次は、お互い駆け出しサッカー業界人。
経験を積んだ後はビジネスパートナー。
ビジネスパートナーと並行して私生活で交流を深めると恋人。
いつだろうか、ただの友人を急に意識し始め、そして今日の関係になるようになったきっかけは。
初めて同じフィールドで勝利をもぎ取った時か、あるいは試合で大失敗をした時か。
同じチームでなくとも同じところを見続けているという遠すぎず近すぎずの距離で見守られ、時には手を差し伸べあるいは
救いを求められているうちに、
救いではなく彼そのものを求めるようになっていたのかもしれない。
もしそうだとしたら、さすがは少年時代から天才プレイヤーの呼び声高かった彼だ。
こちらが惹かれるというのも彼の思惑のうちだったのかもしれない。
それはそれで少しだけむっとするが、どうしたって敵わない相手だと認め、そんな人を愛し愛されている自身のこともまた
すごいと思ってしまう。
世界で一番幸せだと宣言しても良かった。




「何を考えてた?」
「何だと思う?」
「その顔だからきっと楽しいことだな」
「さっすがマイダーリン、ハニーのことよくわかってるう!」




 ぴたりと体を寄せると、躊躇うことなく肩を抱かれる。
温もりが心地良くて幸せで、いい匂いがする。
この幸せがずっと続いて、でもって今季こそ優勝できたらいいなあ。
まだ得られぬ優勝旗と、それを掲げ持つ恋人を思い浮かべは緩んだ頬を更に緩めた。




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