08.貴方なんてきらいだって、断言できたら良かったのに
王族という地位にいる生き物は、向かう先が何であれ己が望みに貪欲だ。
バースはにこやかな笑みを浮かべながらちくりちくりと胸に刺さる言葉を投げつけてくるネクロゴンドの知られざる、いや、
知られてはならない秘匿すべき至宝リゼリュシータ王女に、こちらも負けじと華やかな笑みを浮かべ対峙していた。
「オルテガ殿に現を抜かしているんだから、少しはエルファを譲ってくれてもいいのでは?」
「オルテガ様はオルテガ様、エルファはエルファです。
あなたとて、エルファでなくとも城の娘たちにもてはやされているのですからエルファに固執する必要はないでしょう?」
「これはこれは、エルファにご執心の王女のお言葉とは思えない。エルファを他の子たちと比べるなどとんでもない」
「それは私とて同じ思いです。エルファは私の大切な友です。友をどこへ隠したか答えなさい、バース殿」
「何をとぼけたことを。エルファを俺の目に触れないように隠した張本人が何を言うかと思えば」
嘘はいけませんよ、そっちこそと互いに一歩も引かず押し問答を繰り返していると、神殿の奥から空色の髪を風に靡かせた少女が出てくる。
俺でも私でも目の前にいる侮りがたいこいつでもなく、エルファを独り占めしていたのはタスマン神官団長、あなただったのか。
リゼリュシータとバースはタスマンとともに姿を現したエルファに互いよりも先に認識されるべく、エルファと声を上げた。
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