09.幸福の循環
美男美女の組み合わせではないが、そこそこにお似合いの2人だと思う。
旅を続けているために引き締まった筋肉質の体をした精悍な青年オルテガと、
外に出ても城の中庭止まりという閉じられた世界でしか生きることを許されない王女リゼリュシータ。
どんな会話をしているのかは2人から離れた所にいるこちらには聞こえないが、とても楽しげに見える。
仲睦まじきは良きことと断言できないのが寂しかったが。
「王女がオルテガにかかりっきりだから、俺はエルファに近付き放題。
ネクロゴンドのためにも、勇者にはずっとここにいてもらいたいもんだね」
「駄目だよ。だって、オルテガ様がずっとここにいらしたら私たちの仕事がなくなっちゃうかも」
「なくなることないだろ。エルファたちは誰もが羨む神官団員なんだから、たとえ閑職になってもみんなの憧れの的だよ」
「それじゃ駄目なの。私たちは、有事の際の力を発揮してこその神官団。お飾りなんてやだ」
「そう思ってる人がいるうちはまだ大丈夫だよ」
いっそ、本当に仕事がなくなってしまうような、例えば守るべき人がいなくなってしまえばいい。
バースはリゼリュシータとオルテガを羨ましげに眺めるエルファに、もう1人の客人である自身の接待という名の
仕事を与えるべく体を寄せた。
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