お題・2
02.弱光



 憧れの人がいる。
たった一度か二度だけビデオで観たことがある、自分とそう変わらない年代の10年前の女の子。
日本代表とはいえ、たかだか一マネージャーの名前を公表するほど個人情報は緩くない。
彼女のほっそりとした指先からは出るはずもない光の道が指示され、選手たちを勝利に導いているように見えた。
もちろんそんな光は本当に発していたわけではなく、一緒に観た幼なじみは笑って首を横に振っただけだったが。




「神童くん、もっと自分に自信持っていいんだよ。ていうか周り全員敵ばっかなんだから自分らしか頼れるものないんだし」

「・・・あの、俺にはずっと憧れてる人がいるんですが」

「じゃあその人みたいになればいいじゃん」

「・・・10年前の中学生に、今も憧れてていいと思いますか?」

「てことは今その子は24,5歳? いいんじゃない、だって憧れてるだけで別にラブとかそんなんじゃないんでしょ」




 10年前の輝く女子中学生を好きになっちゃいけないんですか。
神童は素性の知れない自称円堂監督の友人とやらの指先からわずかに零れる光の道に、思わず目を擦った。





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