01.きっとこの手を握る為に生まれて来たんだ
鳳凰学園で開催される演劇の王子役を探しているという噂を聞いた。
マンモス校だから校内で王子の1人や2人くらい見つかりそうだが、どうやら姫役の娘の興が乗らないようで
キャスティングがまったく進んでいないらしい。
王子に選ばれた者には何があるだとかどれがもらえるだとかいったデマも流れているが、何にせよ興味はない。
どんなに姫役の娘が美しかろうと、性格に難がありそうな女の子と好んでお付き合いしようとは思わない。
火遊びと無茶は違うのだ。
凌統はライバル校のネタを仕入れてきた陸遜にへえと返すと、甘寧と対局中だった碁盤に止めを刺した。
「俺らんとこまで流れてくるってことはよっぽど相手選びに困ってるんだろうねえ」
「元々理事長の鶴の一声で企画されたもので、姫役の娘にやる気はなくむしろ困惑しているそうです」
「そりゃかわいそうなことで。あそこの学校は冷たい連中が多いから、もれなく姫さんもそうだったんだろうね」
「でも姫にされるくらいなんだからそいつは美人なんだろ? やる気のねぇ女ってのもいいじゃなぇか」
「美人ですよ、可愛さ余って憎さ100倍くらいです」
「あれ、知り合い?」
「以前キャンプファイアーでちょっとだけ」
キャンプファイアーなんてちょっとどころじゃないだろ、どんな仲なんだよ。
青春してるって感じするねぇ、あんたがこのまま王子役になった方が丸く収まってお似合いなんじゃないのかい?
ときめき要素がまるでなかったキャンプファイアーでの小火事件を色恋沙汰と感じ違いし口々にもてはやす甘寧たちに、
陸遜は違いますよと氷のごとき冷やかさで言い放った。
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